大判例

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前橋地方裁判所 平成6年(行ウ)5号 判決

原告

狩野行弘

右訴訟代理人弁護士

田見高秀

飯野春正

被告

伊勢崎市固定資産評価審査委員会

右代表者委員長

小暮清人

右訴訟代理人弁護士

森田徳司

主文

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実及び理由

第一  請求

原告が平成六年四月二八日、別紙物件目録記載の土地にかかる平成六年度固定資産評価額及び課税評価額について行った不服審査の申出に対して、被告が同年五月二七日付をもってした棄却決定は、これを取り消す。

第二  事案の概要

一  争いのない事実

1  原告は、別紙物件目録記載一、二の土地(以下「本件土地」という。)の所有者であり、右土地を居住用として利用している。

2  訴外伊勢崎市長は、本件土地に対する平成六年度の固定資産税の評価額及び課税標準額につき、前記目録記載一の土地を九二七万三八一八円、同目録記載二の土地を六四九万二〇〇円(右合計一五七六万四〇一八円)とする決定をし、これを平成六年度固定資産税台帳に登録し、平成六年四月二日から同年同月二〇日まで縦覧に付した。

3  原告は、右登録事項に不服があったことから、法定の期間内である同年同月二八日、被告に対し、地方税法四三二条に基づき審査の申出をしたところ、被告は、同年五月二七日、右審査の申出を棄却する決定を行い、文書をもって原告に通知した。

二  争点

1  固定資産評価基準の違憲性(法令違憲)

2  固定資産評価基準に基づく本件評価決定の違憲性(適用違憲)

3  立法形式からみた固定資産評価基準の違憲性

4  本件評価決定の固定資産評価基準違反

5  本件評価決定における評価の違法性

6  本件評価決定における手続違反(実地調査の欠陥)

7  審査手続の違法性

(一) 審査手続(口頭審査)における説明不十分

(二) 審査決定の理由不備、遺脱

三  原告の請求

1  固定審査評価基準の違憲性(法令違憲)

(一) 平成六年度は地方税法のいわゆる基準年度に当たるところ、地方税法(以下「法」という。)三四九条一項は、「基準年度に係る賦課期日に所在する土地……に対して課する基準年度の固定資産税課税基準は、当該土地……の基準年度に係る賦課期日における価格……で土地課税台帳……に登録されたものとする。」と規定し、さらに法三四一条五号は、右「価格」とは「適正な時価をいう。」と定めている。

右規定にいう「適正な時価」の決定について、法四〇三条一項は、「市町村長は、第三八九条又は第七四三条の規定によって道府県知事又は自治大臣が固定資産を評価する場合を除く外、第三八一条第一項の固定資産評価基準によって、固定資産の評価を決定しなければならない。」と定め、法三八八条一項は、「自治大臣は、固定資産の評価の基準並びに評価の実施の方法及び手続(以下「固定資産評価基準」という。)を定め、これを告示しなければならない。」としている。そして、法三八八条一項の規定を受けて定められた自治省告示である固定資産評価基準(昭和三八年一二月二五日自治省告示第一五八号)は、土地の評価は売買実例価格から求める正常売買価格に基づいて適正な評価を評定するという方法によるとしている。

(二) 固定資産評価基準は右に述べたとおり土地の価格について売買実例価格を基準として評価する方法をとっているため、近隣土地の売買実例(土地の取引価格)の変動によって、当該土地に対する固定資産評価、課税標準は当該土地所有者の所有目的や土地利用の形態にかかわらず一律に直ちに影響を受ける仕組みになっており、したがって、たとえば近隣土地の売買実例が高騰すれば、当該土地所有者に売買の必要がなく、またその意思もない場合でも、当該土地に対する固定資産評価、課税標準は自動的に引き上げられることになる。

しかし、同じく土地とはいってもその所有目的、利用形態、所有の主体等は様々であり、とりわけ重要なのは当該土地が所有主体にとってその所有目的、利用形態からして生存権的財産か非生存権的財産(資本的財産)かの区別である。

すなわち、等しく財産といっても、資本的ないし投機的土地所有者と生存権的土地所有者とに区別される。そして、資本主義の商品交換社会のもとで、土地を取得する場合には、その時点における交換価値を対価とせざるを得ず、この商品としての土地が交換価値を有するところから必然的に生ずる土地投機及びそれに基づく土地価格の高騰が深刻化すると、本来的に保障の対象たるべき生存権的土地利用そのものが困難になるという事態を発生させ、生存権的土地利用を守る必要性が増大せざるを得ない。我が国においては、生存権的土地利用を目指すに過ぎない国民も、生存権的土地利用を獲得する前提としてやむを得ず土地所有者になろうとする傾向が存在する。彼らは、土地を購入した後においては、他に売却はあり得ず、自らの人間としての生活や生存を確保するという生存権目的でのみ土地を使用するものであり、あくまでここにその所有権取得の目的が存する。この点において、右のような国民の生存権的土地所有は、いわゆる資本的ないし投機的土地所有とは、まったく異質なものであって、憲法上の人権として保障されるべきものであり、このことは生存権の保障を定めた憲法二五条及び一三条に基づき憲法上の保障根拠を有するものである。

それゆえ、今日、財産権をめぐる保護と制限の立法の合憲性を検討する場合、生存権的財産と非生存権的財産の区別は憲法上要請される基準であり、生存権的財産権は非生存権的財産権と異なり強い保護を必要とする。少なくとも、憲法二五条の生存権保障に基礎をおくものとして憲法上優位の価値を認められる生存権的財産を非生存権的財産と同次元においてとらえることは右憲法上の要請に反するものであり、このことは財産権制限立法の憲法適合性を検討する場合に不可欠の前提となる。

固定資産税の賦課は、課税権の発動として行われる土地所有者に対する財産権の制限にほかならない(そして固定資産評価は固定資産税賦課処分の前提行為である。)のであり、右生存権的財産と非生存権的財産権の区別は、固定資産税賦課立法においても十分考慮されなければならない。

(三) 原告における本件土地所有は、企業による土地所有や投機目的による土地所有と異なり、あくまで居住を目的とする、いわゆるささやかなマイホーム敷地としての土地所有であり、勤労者としての生活を営むための最低必要限度のものである。このようなものとして本件土地を所有し、利用する原告にとっては、近隣地売買により形成される売買実例価格なるものは無縁のもので、原告にとっては本件土地の価値はもっぱらその利用形態にある。

以上のような本質をもつ本件土地はまさに生存権的財産そのものであり、このような生存権的財産について、非生存権的財産をも含む売買価格を基準として土地の評価を決定することは著しく合理性を欠くものであり、結局において生存権的財産と非生存権的財産を同列に扱う不合理をおかすことになる。

土地の評価にあたっては、固定資産評価基準の定めのごとく、売買実例価格を基準として一律に時価を設定するのではなく、土地の利用目的・形態に即し、生存権的財産か否かの基準に基づいて合理的な価格決定がなされるべきであり、生存権的財産たる土地所有についていうならば、その適正な評価方法としては、その利用目的に照らして利用価格(収益還元価格)を評定する方法により、土地の価格を決すべきである。

(四) また、固定資産評価基準は、右のごとく生存権的土地所有と非生存権的所有の区別をしない結果、租税負担面において能力に応じた平等すなわち応能負担を無視することにつながり、法の下の平等を定めた憲法一四条にも反するものである。

さらに、法三四一条五号は前述のとおり「時価」とは「適正な時価」をいうとしているのみで、法自体は「適正な時価」評定の基準は示していないが、右の「適正な時価」は、原告が主張した基準により基づいて評定するものと解すべきであり、もしそうではなく現行固定資産評価基準(自治省告示)をもって法三四一条五号の「適正な時価」評定の基準そのものであるとするならば、法三四一条五号の規定自体が憲法二五条、憲法一三条に反する違憲立法たるを免れない。

法三四一条五号の「適正な時価」は原告主張の基準によって解釈されるべきとするならば、現行固定資産評価基準は、その上位法である法三四一条五号の「適正な時価」、法三四九条の「価格」の解釈適用を誤った立法として違法であり効力を有しないというべきである。

2  固定資産評価基準に基づく本件評価決定の違憲性(適用違憲)

(一) 本件で問題とされる平成六年度の固定資産の評価決定(評価替え)は、自治省が主導して、従来、地方圏で時価公示価格の三ないし四割といわれてきた固定資産評価額を、従来、地方圏で時価公示価格の七割程度を目標に「評価の均衡化・適正化を図る」として、全国的に推進されてきたものであり、過去の評価替えの中でも最も大幅な引上げがなされた。伊勢崎市においてもこれに則り、評価の決定をしているものである。

自治省は、平成四年一月二二日付自治固第三号各都道府県知事宛の自治事務次官発の「『固定資産評価基準の取扱について』の依命通達の一部改正について」で、固定資産評価基準の取り扱いについての依命通達(昭和三八年一二月二五日自治乙固発第三〇号)の第二章第一節1を左記のとおりに改正する旨の通知をした。

「第二章 土地 第一節 通則

1  土地の評価は、売買実例価格から求める正常売買価格に基づいて適正な時価を評定する方法によるものであること。したがって、土地の評価にあたってはもとより現実の売買実例価格そのものによるのではなく、現実の売買実例価格に正常と認められない条件がある場合においてはこれを修正して求められる正常売買価格によるものであること。

なお、宅地の評価にあたっては、地価公示法(昭和四四年法律第四四号)による地価公示価格、国土利用計画法施行令(昭和四九年政令第三八七号)による都道府県地価調査価格及び不動産鑑定士又は不動産鑑定士補による鑑定価格から求められた価格(以下「鑑定評価価格」という。)を活用することとし、これらの価格の一定割合(当分の間この割合を七割程度とする。)を目途とすること。この場合において、鑑定評価価格の活用にあたっては、都道府県単位の協議機関において情報交換等必要な調整を行うこと。」

そして、さらに平成四年一一月二六日付自治評第二六号各都道府県総務部長・東京都主税局長宛の自治省税務局資産評価室長の「平成六年度評価替えは、平成四年七月一日を価格調整基準日として標準宅地について鑑定評価額を求め、その価格の七割程度を目標に評価の均衡化・適正化を図ることとしているが、最近の地価下降傾向に鑑み、平成五年一月一日時点における地価動向も勘案し、地価変動に伴う修正を行うこととする」としている。

(二) 今回の評価替えの右手法は、バブル経済下での土地価格急騰の影響を受けて上昇した地価公示価格の一定割合を目標として評価額の決定を行い、一定の地価下落が生じた平成五年一月一日の公示価格を基準としたものの、現実の地価はこれ以後もさらに下落を続けたため、平成六年度について評価された本件固定資産評価は特に大都市部では、以前の評価額の大幅引上げになると同時に、平成六年度の地価公示価格さえも上回るいわゆる逆転現象すら起こすに至っている。

国土庁は、平成六年三月二五日、地価公示価格を公示し、群馬県についても三八六地点(四八市町村)の地価が公示されたが、地価の平均変動率(全用途)はマイナス3.5パーセントで、平成五年(マイナス2.9パーセント)から二年連続のマイナスとなった。住宅地については、伊勢崎市は県内第三位の下落自治体であり、下落率はマイナス3.8パーセントであった(住宅地の県内平均変動率は、マイナス2.7パーセント)。

原告の本土地について、伊勢崎市は、一平方メートルあたり七万一三四円の評価決定をしているのであるが、本件土地に近接する地価公示標準地である伊勢崎市豊城町二二四九番八(伊勢崎15)三三一平方メートルの六年度の地価公示価格は一平方メートルあたり七万一〇〇〇円であり、原告の本件土地の固定資産評価は、地価公示価格の七割どころか、実際には、右地価公示価格とほぼ同水準(九九パーセント)にまで引き上げられる結果となっているのである。

(三) 以上のとおり、固定資産評価の評定にあたり、地価公示の七割を目標として評価をはかることを指示した前記自治省の諸通知は、地方税法による固定資産評価の基準となる「適正な時価」を適用するにあたり、非生存権的土地所有にあたる資本家的または投機的土地所有を含む土地価格の高騰の影響を生存権的土地所有にも一律に及ぼすような適用をはかり著しく不合理な結果を生じさせるものとして、違憲・違法といわざるを得ない。したがって、これにより本件土地の評価を行った伊勢崎市の本件土地に対する評価決定も違憲・違法であり、これを看過した本件審査決定も違法であって、取消しを免れない。

3  立法形式からみた固定資産評価基準の違憲性

(一) 憲法は、第八章に「地方自治」と題する一章を設け、九二条で「地方公共団体の組織及び運営に関する事項は、地方自治の本旨に基づいて法律でこれを定める。」と規定し、さらに、九四条で「地方公共団体は、その財産を管理し、事務を処理し、及び行政を施行する権能を有し、法律の範囲内で条例を制定することができる。」と規定している。

これは、憲法が地方自治を保障し、地方公共団体にその事務を自らの責任において行う権能を認めたことを意味するところ、地方公共団体が地方自治の本旨に従ってその事務を処理するためには、課税権すなわち必要な財源を自ら調達する権能が不可欠である。したがって、地方公共団体の課税権は、地方自治の不可欠な要素として憲法によって直接与えられたものと解される。かく解するならば、固定資産税は、地方公共団体が課する租税として地方公共団体固有の租税である。

ところで、固定資産の価格は、固定資産税の課税標準となるものであるから、憲法八四条が求める租税法律主義、課税要件法定主義の厳格な適用を受けなければならないところ、固定資産税を右のごとく地方公共団体固有の租税と理解するならば、その立法形式は法律ではなく条例ということになり、固定資産税は租税条例主義の適用を受けることになる。固定資産税は、条例のみが課税権の根拠となるものであって、法律である地方税法は、各地方公共団体が規定する条例の統一的基準と枠組みを示すものに過ぎないと考えなければならない。

固定資産評価基準は単なる行政規則であり、租税条例主義の立場からするならば、固定資産の評価に当たって何ら基準となるべきものではない。

しかるに、本件評価決定は、条例に依拠することなく同評価基準によりされたものであるからして憲法八四条及び九四条に反し違憲無効である。

(二) 固定資産の価格は、固定資産税の課税標準となるものであるから、憲法八四条が求める租税法律主義、課税要件法定主義の厳格な適用を受けなければならないものであるところ、前記のごとく、法四三九条一項、三四一条五号においては、課税標準たる「価格」及び「適正な時価」の具体的内容を明らかにすることなく、その具体的内容が如何なるものであるかは、法三八八条によって自治大臣の告示に委ねられているものである。

しかるところ、右委任を受けて発せられた告示は、原則的には行政機関の内部規律であって、それに法規たる性質を認めることができない。また、告示は形式的側面からは行政機関の一定の判断の内容を公式に国民に表示するための形式である。課税要件の中でも最も重要な要件と思われる課税標準たるべき固定資産評価に関し、このような性質をもつ告示に委任している法三八八条及び同告示によって定められた固定資産評価基準並びに依命通達は、租税法律主義、課税要件法定主義を定めた憲法八四条に違反し違憲無効である。

仮に右主張が採用されないとしても、委任立法の限界を越えている点で違憲である。

租税法律主義、課税要件法定主義の下にあっては、法律による行政立法に対する委任は、具体的、個別的なものでなければならず、包括的、白地的なものであってはならないところ、法三八八条による自治大臣の告示への委任は、正に包括的、白地的委任といわなければならない。

固定資産税の課税標準は、資産の「適正な時価」であるとすることを変更あるいは修正することは許されない。しかるに、固定資産評価基準の内容は画一的でかつ細部にわたっていることから、個々の資産の実情に即した「適正な時価」を定める妨げとなっており、それは事実上、評価基準に基づく評価を「時価とみなす」という逆転した結果につながっている。

これは、明らかに委任立法の限界を越えるものというべく、法三八八条及び同条の委任に基づく告示(固定資産評価基準)並びに依命通達は、租税法律主義、課税要件法定主義を定めた憲法八四条に違反し違憲無効である。

4  本件評価決定の固定資産評価基準違反

前記のとおり、都道府県知事宛固定資産評価基準の取扱についての依命通達が、平成四年一月二二日、自治固第三号各都道府県宛自治事務次官通知によって、追加的に改正され、宅地の評価に当たっては、地価公示価額、都道府県地価調査価格及び鑑定評価額の七割程度を目途とすることとされたが、伊勢崎市長は、本件宅地評価決定に当たり、標準宅地を選定し、平成六年度の評価替えにおける価格調査基準日が平成四年七月一日であるところから、平成四年七月一日における右標準宅地の価格を鑑定評価によって定め、さらに、中央固定資産評価審議会の了解事項を受けて平成五年一月一日までの時点修正を行って、平成五年一月一日時点の標準宅地の価格を決定し、その上で、前記追加依命通達を適用して価格を決定したものである。

ところで、固定資産評価基準が求めている「適正な時価」を決定する上での標準宅地の適正な時価は、賦課期日である平成六年一月一日時点におけるそれであるべきであるが、本件価格決定は、平成五年一月一日時点での価格を基準として算出するものであるから、同評価基準に反し違法無効であり、これを看過した被告の棄却決定も同様に違法であって取消しを免れない。

5  本件評価決定における評価の違法性

仮に現行固定資産評価基準またはこの適用につき自治省が平成六年度評価替えにつき発した諸通知が違憲・違法でないとしても、伊勢崎市は本件土地の評価を行うにつき以下のとおり公正妥当な判断をしておらず、その点で違法である。

(一) 本件土地の標準宅地の選択に関する判断の誤り

固定資産評価基準による評価方法(市街地宅地評価法)では、宅地の利用状況に応じて、宅地を商業地区、住宅地区、工業地区に区分した上、さらに、右区分した各地区を「街路の状況、公共施設等の接近の状況、家屋の疎密度、その他の宅地の利用上の利便等からみて相当に相違する地域ごとに区分し」、「当該地域の主要な街路に沿接する宅地のうち奥行、間口、形状等の状況が当該地域において標準的なものと認められるものを標準宅地と」し設定し、その標準宅地につき売買実例価格に基づき正常売買価格を求めて「適正な時価」を求め、これに基づいて当該標準宅地の沿接する主要な街路の路線価を付設するものとしている。

ところで、伊勢崎市は、不服申出審査における答弁書では、原告の本件土地評価における右標準宅地は、伊勢崎市上植木本町殖蓮中学校北カネコ建築塗装付近に所在する土地とし、その標準宅地の単位面積あたりの「適正な時価」は一平方メートルあたり九万四七〇〇円(鑑定評価額、平成五年一月一日時点修正時)、これに基づく当該標準宅地の沿接する主要な街路の路線価を一平方メートルあたり六万六二〇〇円として評価をすすめた(九万四七〇〇円の七割が六万六二〇〇円)と主張している。

しかし、原告が、不服審査申出に先立ち、伊勢崎市担当課に電話問い合わせをして聞いたときには、原告の本件土地に対する標準宅地は、右主要な街路をはさんで原告宅地の真向かいに位置する伊勢崎市上植木本町殖蓮公民館南あさかハイツ付近の土地で、その標準価格は一平方メートルあたり五万六〇〇〇円と説明された。

実際にも、あさかハイツ所在の土地は主要な街路に沿接する点では、原告所有の本件土地と同一条件であり、街路をはさむだけで原告土地の評価の基礎とするにはカネコ建築所在の土地よりも適切であり、逆にカネコ建築所在の土地と原告の本件土地は条件が異なる。これを無視してカネコ建築所在の土地の鑑定評価額から導かれた路線価を原告の本件土地の評価の基礎とするのは理由がない。

この伊勢崎市の評価方法を是認した本件審査決定は評価方法の適否の判断を看過した違法なものである。

(二) 本件土地の側道加算における側道認定の誤り

伊勢崎市は、右路線価(一平方メートルあたり六万六二〇〇円)を基礎として、本件土地の評価を求めるについて、正面路線単価は右路線価と同額の一平方メートルあたり六万六二〇〇円とした上、原告の本件土地の東側に存在する私有地を側道と評価して側方路線加算を行い、この「側道」の路線価を一平方メートルあたり五万六〇〇〇円と評価した上で、側方路線加算分として一平方メートルあたり三九三四円を加算して、結局一平方メートルあたり七万一三四円を本件土地の評価額として算定した。

しかしながら、伊勢崎市が、「側道」と判定した土地は、現地において主要な街路から三軒分ほど南に入ったところで直ぐに用水路に突き当たる行き止まり袋地であり、これを「側道」として側方路線加算を行うことは実態にそぐわない誤りである。

この伊勢崎市の評価方法を是認した本件審査決定は評価方法の適否の判断の誤りを看過した違法なものである。

6  本件評価決定における手続違反(実地調査の欠陥)

(一) 法四〇八条は、市町村長に「毎年少なくとも一回」の実施調査を義務付け、さらに、固定資産の評価に従事する事務職員の任務として公正な評価をするため、「納税者とともにする実地調査、納税者に対する質問」等による調査をなすことを法が直接課している(法四〇三条二項)。

これは、固定資産の状況が物理的・社会的に変動するため、その事情をもっともよく知る納税者から説明を受けて評価することが公正妥当な評価のためにどうしても必要であるとしたもので、納税者からみれば課税処分という公権力の行使に対する適正な法定手続(憲法三一条)の保障の側面を実体法で規定したと評価される重要な規定である。

(二) しかるに、原告が知る限りでは、伊勢崎市は、本件評価決定にあたり、右の実地調査を実施せずに評価を行っており、右は法四〇八条、四〇三条二項違反であり、評価額の妥当性の有無にかかわらず、手続違反に基づく違法として、固定資産課税台帳記載価額そのものが取り消されるべきであり、被告の決定も右手続違反を看過しているものであって取り消されるべきである。

7  審査手続の違法性

(一) 審査手続(口頭審査)における説明不十分

被告は、本件原告の審査申出に対して、平成六年五月二三日と同月二六日の二回、原告の請求に基づいて口頭公開審査の期日を実施した。

しかしながら、「納税者は、固定資産がどのような仕組みや手順によって価格が決定されているかを知らないのが普通です。審査委員会としては、口頭審査にあたって申出人に対して、まず不服理由を明らかにするための価格算定の方法、評価の根拠や方法などを十分に説明する必要があります。……審査委員会が、申出人の反論や不服事由が十分できないまま審理を終結したときは、その審査は手続の公正を欠き、違法とされます。」(申出人が受け取った審査の説明文)という建前とはまったく異なるもので、申出人の言い分をまともに聞いてくれず、十分な説明もなく、また申出人の実地調査の申出も取り上げられないというもので、法が予定する手続の公正は遵守されなかった。

さらに、原告が標準宅地を明示してほしいと要望したのに対し、評価庁は、漠然と「カネコ建築塗装付近の土地」とするのみで、右土地が「上植木本町二七一七番三」に特定されるとの説明は何らされなかった。

このような審査手続に基づきなされた本件審査決定は手続違反として取り消されるべきである。

(二) 審査決定の理由不備、遺脱

被告の本件審査決定は、その決定書によってみるかぎり、評価庁(伊勢崎市)の決定をただ鵜呑みに正しいとするだけで、そのように判断する理由も申出人の申出(不服理由)に対する判断も記載していない。

すなわち、「評価庁の標準宅地の選定は適切である。」、「評価庁は、標準宅地の評価額を、……鑑定価格の概ね七割程度を目標に、六万六二〇〇円/平方メートルを算出した。評価庁の評価額は適切である。」、「評価庁は主要な街路の路線価を当該標準地の評価額と同額とした。(同一路線であるところから)評価庁の主要な街路の路線価は適切である。」等であり、評価庁の答弁を援用して結論を付加するだけて、何ら理由らしき記載はない。

また、申出人が説明を求めていた「側道」認定の当否については、判断が遺脱している。

納税者の不服申出に対する十分な説明を手続の本旨とする不服申出において審査の結果としての決定書において、このような理由不備・遺脱が存在するときは、審査手続自体が手続違反による違法なものとして、審査決定を取り消すべきである。

四  被告の反論

1  固定資産評価基準の違憲性について

課税標準としていかなる評価方法をとるかは立法政策の問題であって、立法府の裁量に委ねられているところであり、いわゆる合理性の基準が妥当し、著しく不合理と認められない限り、その違憲の問題は生じないものである。

固定資産税は、土地、家屋及び償却資産の資産価値に着目して課せられる物税であり、財産課税的性格を有する。沿革的には地租及び家屋税に端を発するとはいえ、従来における賃貸価値を課税標準とする純然たる収益税とはその性格を異にする。

資産価格の決定理論として、その所有目的、利用形態から生存権的財産か非生存権的財産(資本的財産)かを区別し、生存権的財産については利用価格(収益還元価格)を評定する方法によるという所論もあり得ようが、一般的には、土地などの資産が価値を持つのは、それらが収益をもたらすからであり、また、このような収益以外にも経済的利益をもたらす、それは値上がり益である。したがって、Ptをt期の資産価格、Pt+1を(t+1)期の資産価格の期待値とすれば、資産がもたらす経済的利益の期待値は、収益rtと期待キャピタルゲインPt+1−Ptの和として表される。すなわち、資産がもたらす経済的利益の期待値は収益と期待キャピタルゲインの和である(Pt=rt+(Pt+1−Pt))。このことから次のようにいえる。第一に収益によって資産価格が決まる。第二に将来の価格(の期待値)が現在の価格に影響する。このことは自己所有地や持家の場合、土地利用が独立の金銭的収益をもたらすことはないが、土地が有益なサービスを生み出しているのは賃借されている場合と全く同じである。所論の「収益還元価格」と呼ばれるものも、キャピタルゲインの存在を考えに入れても、一定の条件の下では、資産価格は収益と利子の率だけで表示することができるとされるものであって、これは「ファンダメンタル価格」といわれるものである。

ところで、法三四一条五号は価格は適正な時価をいうとされ、一般的に適正な時価とは、正常な条件の下において成立する取引価格をいうものと解される。

この適正な時価をどのように求めるかは、固定資産評価基準の内容に盛られている(法三八八条一項)。固定資産評価基準は、自治大臣の定めるものであり、告示の形式をもって示されるものであるが、法律は、市町村長は、自治大臣が告示した評価の基準並びに評価の実施の方法及び手続によって固定資産の価格を決定しなければならないものであり(法四〇三条一項)、これによって、市町村間の評価の適正化と均衡化が図られるわけである(固定資産税に限らず、およそどのような税であっても、その負担の適正、均衡が確保されることが肝要であって、負担の適正、均衡が維持されるか否かはその税を良税ともし、悪税ともする重要な鍵となる)。

2  立法形式からみた固定資産評価基準の違憲性について

(一) 憲法八三条は、財政処理の根本原則を定め、財政に関する国の活動が国会の議決に基づいてなされるべきであると定めている。国会または議会が、もともと国民が不当な負担を蒙ることを避けるために国の財政作用に適切なコントロールを及ぼす目的のために生まれてきたものであることは歴史の示すところである。

次に、統治社会としての国家は、その内部に地方公共団体という下級の統治社会を設けて、これに広い意味の国家の任務の一部を行わせている。その結果として国の財政と地方公共団体の財政の区別が生ずる。本条に「国の財政」というのは、地方公共団体の財政に対して、国家の財政をいうものと解されるが、いずれも国民の負担に帰する問題である点においては、異なるところはないのであるから、「国の財政」に関するこの憲法上の原則は、ことの性質上必要な修正を加えつつ、そのまますべての地方公共団体の財政にも妥当するものど解さなければならない。マッカーサー草案七六条は、特に「国の財政」といわず、「租税を課し、金を借り入れ、資金を支出し、貨幣を発行し、規制する権力は国会によって行使される。」と規定している。

そして、同法九二条は「地方公共団体の組織及び運営に関する事項は、地方自治の本旨に基づいて、法律でこれを定める。」と規定し、ここにいう「法律で」定めるという意味については、地方公共団体は、国から完全に独立な存在ではあり得ず、国の権力から独立な固有権というようなものをもつわけではなく、その存立の根拠は、もっぱら国の権力にあることを意味すると解されている。

ところで、同法八四条は租税法律主義を定め、公権力によって国民に対し金銭債務を一方的に賦課することは、必ず国会の議決する法律によらなければならないとしている。したがって、国または地方公共団体が、その経費にあてる目的で強制的に徴収する金銭を賦課することは国会の議決する法律によらなければならないと解すべきである。

したがって、同法九四条の地方公共団体の権能も、同法八三条の財政処理の根本原則及び同法八四条の租税法律主義の制限を受けることはいうまでもなく、所論の租税条例主義なる原則は採用できない。

(二) 同法八四条の趣旨は、租税を課し、それを変更するには、法律に基づいてなされなければならないという意味であるが、単にその根拠が法律になければならないというだけではなく、租税の具体的内容、たとえば課税物件、課税標準、税率、租税義務者などについて法律で定めるべきであるとすることであるが、それは必ずしも他の法形式への委任を絶対に許さないという趣旨ではなく、合理的理由があれば、他の法形式への委任が許され、これをもってあえて本条違反と見る必要はない。

ところで、法三四九条一項は、固定資産税の課税標準を賦課期日における価格と規定し、法三四一条五号で、「価格」とは、適正な時価をいうと規定している。そして、法四〇三条一項は、市町村長は、固定資産税の課税標準の基礎となるべき固定資産の価格を決定するに当たっては固定資産評価基準によって決定しなければならないとしている。これは、評価の適正と均衡を確保する趣旨であって、固定資産税に限らず、おおよそどのような税であっても、その負担の適正、均衡が確保されることが肝要であって、負担の適正、均衡が確保されるか否かは、その税を良税ともし、悪税ともする重要な鍵となるものである。固定資産税の負担は、その課税標準である固定資産の価格等に市町村の条例で定める税率を乗じて決定されることとなるものであるが、税率は条例の規定をもって一律に定めるものであるのに対し、その課税標準となる固定資産の価格等は、個々の固定資産について具体的にその固定資産の示す価値を秤量して認定するものであるから、固定資産税の負担については、固定資産の価格がどのようになされるかということが極めて重要な位置を占めるものである。このことに徴して固定資産税に係る自治大臣の任務として、固定資産評価基準を定め、これを告示しなければならないとしたのが法三八八条一項の規定である。

これは合目的理由から単に、その具体的、細目的、技術的な算定基準を自治大臣の告示に委ねたものに過ぎないものであるから、委任立法の限界を超えるものではなく、市町村長が固定資産の価格を決定するに当たって法的に基準足りうるものである。

したがって、市町村長は、原則として、固定資産評価基準によって固定資産の価格を決定しなければならないとしている法四〇三条一項及び自治大臣は、固定資産の評価基準並びに評価の実施の方法及び手続を定め、これを告示しなければならないとしている法三八八条一項の規定は憲法八四条に違反しない。

3  本件評価決定の固定資産評価基準違反について

本件土地の平成六年度の固定資産評価に当たって平成四年七月一日を評価時点とし、さらに、中央固定資産評価審議会の了解事項を受けて平成五年一月一日までの時点修正を行って、平成五年一月一日時点の標準宅地の価格を決定し、その上で、本件価格を決定するという取扱は、「固定資産評価基準の取扱いについて」(昭和三八年一二月二五日付自治乙固発第三〇号自治事務次官通達、「固定資産評価基準の取扱いについての依命通達の一部改正」(平成四年一月二二日付自治固第三号自治事務次官通達)、「土地及び家屋に係る平成六年度(基準年度)の評価の運営について」(平成四年五月二二日付自治評第六号自治省税務局長通達)及び「平成六年度評価替え(土地)に伴う取扱いについて」(平成四年一一月二六日付自治評第二八号自治省税務局長資産評価室長通達)に依拠したものであって、これら各通達は「固定資産評価基準」と一体のものとして取り扱われるべきものであるところ、土地の評価については、固定資産評価基準等に基づき、すべての土地(全国で約一億七五〇〇万筆)を同一の基準で評価すること、市町村が評価した後、都道府県及び各都道府県内の市町村間の均衡を図るため、それぞれ所要の調整を行うこと等から、一連の評価事務には相当の期間を要するものである。このため、これらの手続を経て、二月末日までに価格を決定しなければならない等の物理的制約を考慮すると、基準年度の賦課期日から評価事務に要する期間をさかのぼった時点の時価を基準として(評価替えに係る価格調査基準日は、従来から基準年度の前々年度の七月一日としている。)賦課期日における価格を評価することは、地方税法上当然に予定していることを考えあわせれば、右各通達は法の正しい解釈に合致するものである。

4  本件評価決定における評価の違法性について

(一) 本件土地の標準宅地の選択に関する判断の誤りについて

本件土地が所在する地区(都市計画法八条の用途地域は第一種住居専用地域)については、用途区域の区分について住宅区域(普通住宅地区)に区分し、状況類似地域内においてその主要な街路として本件土地の北を殖蓮小学校から主要地方道桐生・伊勢崎線に北西から南東に走る道路(市道二―二六七号線)を選定し、右道路に沿接するカネコ建築塗装付近の土地である上植木本町二二一七番三を標準宅地(固定資産評価額六万六二〇〇円/平方メートル)として選定したものである。原告が適切であると主張するあさかハイツ付近の土地(固定資産評価額五万六〇〇〇円/平方メートル)は本件土地の右主要街路を挟んで北側(都市計画法八条の用途地域は住居地域)にあり、かつ右主要街路に沿接する土地ではない。したがって、標準宅地として伊勢崎市上植木本町殖蓮中学校北カネコ建築塗装付近を選定したことは不適切とはいえない。

(二) 本件土地の側道加算における側道認定の誤りについて

本件土地の東側に存在する私有地は、右主要街路から本件土地の東側を南に走り、用水のところで右折(西方)し、さらに二画地を経て、再び右折(北方)し、本件土地の西方で右主要街路に至るコの字型の土地であり、建築基準法四二条一項四号の私道の位置指定を受けた道路(昭和三八年一一月四日第六八号指定)であって、地目も公衆用道路となっているのであるから、評価庁の側道認定を相当とした審査庁の判断は誤っていない。

5  本件評価決定における手続違反(実地調査の欠陥)について

法四〇八条は固定資産の状況を毎年少なくとも一回実地調査しなければならない旨規定しているが、これは適正な評価を確保するための一つの方途として規定されているものであって、その評価された価格がそれ自体が適正を欠くものでない限り、実地調査に基づかないでされた評価であってもそれだけの理由で評価が無効となるものではない。このことは、固定資産の価格等は毎年二月末日までにこれを決定しなければならないものとされており(法四一〇条)、その期間は限定されているので、この短期間市町村内に所在する固定資産のすべてについて、かつ、その細部にわたって綿密な調査を行うことは極めて困難であって、原告の主張はそれ自体失当である。なお、評価庁は、平成四年度全棟全筆調査事業実施により、審査申出を含む旧殖蓮地区の実地調査を行っており、また、平成五年度には、平成五年一一月二四日審査申出地にかかる新築家屋の調査及び土地現況調査を行っており、さらに、本件審査中の平成六年五月二三日、被告の職権により審査申出地の実地調査を実施している。

6  審査手続の違法性について

(一) 審査手続(口頭審査)における説明不十分について

被告は、固定資産評価基準に即して本件土地の評価を手順の概要、その評価方法を説明しているのであるから、原告が不服事由を特定して主張するため必要と認められる合理的範囲の事実を明らかにしているのであるから、被告の措置に違反とすべき点は存しない。

なお、原告は、標準宅地の所在を「カネコ建築塗装付近の土地」として具体的に「上植木本町二二一七番三の土地」と特定しなかった点を指摘するが、個人のプライバシー保護の観点から、当該地点の具体的な地番の表示は避けるのが実務の取扱いである(平成五年一一月二五日付自治評第四一号各道府県総務部長、東京都総務・主税局長宛、自治省税務局資産評価室長通知参照)

(二) 審査決定の理由不備、遺脱

本件決定書によれば、本件土地の評価が固定資産評価基準に従って適正に行われているかどうか、同土地の評価に当たり比準した標準宅地との間で評価に不均衡がないかどうか審査し、その限度で判断されているものであるから、原告が指摘するような瑕疵はない。

第三  争点に対する判断

一  固定資産評価の基準及び方法

前記の各争点について検討する前提となる固定資産評価の基準及び方法は次のとおりである。

1  固定資産評価基準

法三四九条一項は、「基準年度に係る賦課期日に所在する土地……に対して課する基準年度の固定資産税課税基準は、当該土地……の基準年度に係る賦課期日における価格……で土地課税台帳……に登録されたものとする」と規定し、さらに法三四一条五号は、右「価格」とは「適正な時価をいう。」と定めている。

右規定にいう「適正な時価」の決定について、法四〇三条一項は、「市町村長は、第三八九条又は第七四三条の規定によって道府県知事又は自治大臣が固定資産を評価する場合を除く外、第三八一条第一項の固定資産評価基準によって、固定資産の評価を決定しなければならない。」と定め、法三八八条一項は、「自治大臣は、固定資産の評価の基準並びに評価の実施の方法及び手続(以下「固定資産評価基準」という。)を定め、これを告示しなければならない。」としている。そして、法三八八条一項の規定を受けて定められた自治省告示である固定資産評価基準(昭和三八年一二月二五日自治省告示第一五八号)は、土地の評価は売買実例価格から求める正常売買価格に基づいて適正な評価を評定するという方法によるとしている。

2  固定資産評価基準による評価方法(土地について)

固定資産評価基準による評価方法について、証拠(乙二七ないし二九)によれば、次の事実が認められる。

土地の評価に当たっては、土地の地目の別に評価を行うものとし、各筆ごとに評価点を付設し、その評価数を評点一点中の価額に乗じて各筆の土地の価額を求めることとしている。次に宅地の評点方法は、市町村の宅地の状況に応じ、主として市街地的形態を形成する地域における宅地については「市街地宅地評価法」(路線価式評価法)によって、主として市街地的形態を形成するに至らない地域における宅地については「その他の宅地評価法」によって付設する。

市街地宅地評価法による宅地の評点数は、次の順序によって付設する。①市町村の宅地を商業地区、住宅地区、工業地区、特殊地区等に区分し、それらの各地区について、その状況が相当に相違する区域ごとに、その主要な街路に沿接する宅地のうちから標準宅地を選択する。②標準宅地について、売買実例価格から評定する適正な時価を求める。この場合、具体的には平成六年度から地価公示価格、都道府県地価調査価格及び不動産鑑定士又は不動産鑑定士補の鑑定評価から求められた価格を基準とし、これらの価格の七割程度を目標に評価を行うものである。そしてこれに基づいてその標準宅地に沿接する主要な街路について路線価を付設し、これに比準してその他の街路の路線価を付設する。③路線価を基礎として、「画地計算法」(宅地の奥行、形状、角地等の影響を計算する方法)を適用して、各筆の宅地の評点数を付設する。この場合の路線価は単位面積当たりの価額によって付設される。

二  固定資産評価基準の違憲性(法令違憲)の主張について

固定資産評価基準は、固定資産税の課税標準となる土地、家屋の評価の算定方法であるところ、憲法上、納税の賦課は法律又は法律の定める条件によるものとされている(憲法八四条)。

したがって、いかなる課税標準をとるか、また、課税標準としていかなる評価方法をとるかは立法政策の問題であって、このことは立法府の裁量に委ねられているところであるから、固定資産評価基準は、それが著しく不合理と認められるものでない限りその違憲の問題は生じないものである。

これを本件についてみると、確かに、売買実例を価額を基礎とする固定資産評価基準によるときは、居住用建物敷地として利用する宅地につき、当該土地所有者に売買の必要や意思がなくても、近隣の売買実例の高騰に伴って固定資産の評価が引き上げられ、その結果当該土地所有者は、固定資産税の負担の増加を余儀なくされる可能性があることは否定できない。

しかし、現行の地方税法上、固定資産税は資産価値に着目して課される物税であると解すべきであり(最高裁判所昭和四七年一月二五日判決・民集二六巻一号一頁参照)、資産価値は交換価値をもってはかるのが相当であることに照らすと、評価基準が、土地につき売買実例価額(ただし非正常要素を除いたもの)を評価の基礎としていることは、むしろ法の趣旨に合致するものというべきである。

また、固定資産税が資産価値に着目して課せられる税であることは右のとおりであって、いわゆる収益税とは解しえないところであるが、正常な市場価格は、潜在的な収益力を示すものともいえるものであるから、このような見地からも、売買実例価格を基礎とする評価基準には合理性が認められるというべきである。

なお、この点に関して、原告は、土地の評価に当たっては、土地の利用目的、形態に即し、生存権的財産権と非生存権的財産権を区別し、生存権的財産権たる土地所有についての適正な評価方法としては、その利用目的に照らして利用価格(収益還元価格)を評定する方法によるべきであると主張する。そして、右方法によることにもそれ相応の合理性がないとはいえない。

しかしながら、右方法は、単に立法政策の一つにすぎないところ、前記のとおり、憲法はどのような方法をとるかはこれを法律に委ねており、合理的と考えられるいくつかの政策のうち、どの政策を選択するかを一義的に定めているものではないから、原告主張の右方法に合理性が認められるからといって、このことから本件固定資産評価基準が著しく不合理であるということはできず、したがって、本件固定資産評価基準が憲法二五条、一三条、一四条に違反するということはできない。

三  固定資産評価基準に基づく本件評価決定の違憲性(適用違憲)の主張について

前記判示のとおり、固定資産評価基準の合憲性が肯認される以上、これにより本件土地の評価を行ったことが違憲であるということはできない。

なお、原告は、本件土地の固定資産評価は、時価公示価格の七割どころか、実際には、右価格とほぼ同水準(九九パーセント)にまで引き上げられる結果となっていると主張するが、たとえ右の主張事実があったとしても、更に進んで、右結果が原告の生存権等を脅かすものであるとの事実については、その具体的な主張立証がないから、適用違憲の主張は採用することができない。

四  立法形式からみた固定資産評価基準の違憲性の主張について

1  憲法九四条は、「地方公共団体は、その財産を管理し、事務を処理し、及び行政を執行する権能を有し、法律の範囲内で条例を制定することができる」と定めている。

したがって、地方公共団体の自治権を保障する右の規定の趣旨からすれば、憲法は、地方公共団体に、その自治権の裏付けとして課税権が与えられることを否定するものではないと解される。しかしながら、右憲法の規定は、地方公共団体の課税権を具体的に定めたものではないから、右の規定から当然に地方公共団体に課税権が発生すると解することは困難である。

のみならず、憲法は、第八章で地方自治の規定を設けながらも、同時に「地方公共団体の組織及び運営に関する事項は、地方自治の本旨に基づいて、法律でこれを定める。」(憲法九二条)と規定していることから明らかなように、地方自治の大綱は国の法律で定めるのを憲法の建前としているものと解される。

また、実質的にみても、課税についてこれを完全に地方公共団体の自主自律に委ねることは、各地方公共団体間で著しい差異をきたし、国という統一体からみて経済秩序に混乱をもたらすおそれがあるから、国税と地方税との相互の関連を考え、かつ地方公共団体相互間の適当な調整を図る必要があり、さらにまた、いわゆる租税法律主義(憲法八四条)の建前からいっても、その大枠は、法律で定めておくのが適当であると解される。

そうすると、法二条が、「地方団体は、この法律の定めるところによって、地方税を賦課徴収することができる。」と規定している趣旨は、地方税の賦課徴収の主体が地方公共団体であることを明らかにするとともに、その課税権は既述のとおり地方公共団体に固有のものではなく、法二条により国から付与されたものであり、地方公共団体は、この国から付与された課税権に基づいて地方税を課税することができることを明らかにしたものであると解される。

したがって、憲法及び地方税法は、地方公共団体相互間の均衡等を考慮し、地方公共団体の課税については、国法でこれを規制し、一定の枠を定め、右法律の制限内で、各地方公共団体の実情に即した課税を自主的に行わしめることとしたものであり、地方税法三条が「地方団体は、その地方税の税目、課税客体、課税標準、税率その他賦課徴収について定をするには、当該地方公共団体の条例によらなければならない。」と規定するのは、右の趣旨に基づくものであると解される。

右のとおりであるから、固定資産税が地方公共団体固有の課税であって、条例のみが課税権の根拠となるものであり、固定資産評価基準に依拠する本件評価決定が違憲であるとの原告の主張は、採用することができない。

2  租税の賦課は、法律又は法律の定める条件によることとされているが(憲法八四条)、租税法の対象とする経済事象は、極めて多種多様であり、しかも激しく変遷していくので、これに対応する定めを法律の形式で完全に整えておくのは困難であるし、現実に公平課税等の租税原則を実現するためにも、その具体的な定めを命令に委任し、事情の変遷に伴って機動的に改廃していく必要があることは否定できない。それゆえ、課税上基本的な重要事項は法律の形式で定め、具体的、細目的な事項は命令の定めるところに委ねることは憲法上許容されているところと解される(憲法七三条六号)。

そこで、本件固定資産評価基準について検討するに、本件固定資産評価基準は自治大臣の定めた告示であり、地方税法三八八条は右基準を自治大臣が定めるべきことを法定しているものであるから、本件固定資産評価基準が法律の委任に基づく命令であることは明らかである。ところで、固定資産税の課税要件の内容の一つである課税標準について法は、三四九条一項でこれを明記し(法三四一条五号と相俟って「適正な時価」とされている。)、単にその具体的、細目的、技術的な算定基準を自治大臣の告示に委ねたにすぎないものであるから、立法形式上、右固定資産評価基準は市町村の固定資産評価に当たって法的に基準たりうるものと解される。そして、右固定資産評価基準は、固定資産の評価の基準並びに評価の実施の方法及び手続を、土地、家屋、償却資産に分けて細目的、技術的見地から詳細に規定して全国的統一基準を定めていることはその内容から明らかであるから、前記法令の適法な委任の範囲内にとどまるものであると解される。

したがって、本件固定資産評価基準が租税法律主義に反し、あるいは委任立法の限界を超えるものであって違憲であるとの原告の主張は、採用することができない。

五  本件評価決定の固定資産評価基準違反の主張について

固定資産評価基準は、法三八八条一項の規定に基づき、固定資産の評価の基準並びに評価の実施の方法及び手続について定めているものであって、同法三八九条一項、四〇三条一項及び七四五条の規定により、固定資産税における固定資産の評価及び価格の決定に当たっては、この固定資産評価基準によらなければならないとされている。そして、証拠(乙三〇ないし三二)によれば、平成六年度の評価替えに当たり、平成四年七月一日を価格基準日とし、平成五年一月一日時点における修正をし、地価公示価格の七割程度を目途に価格の決定を行ったことが認められる。

ところで、土地の評価については、固定資産評価基準等に基づき、すべての土地(全国で約一億七五〇〇万筆)を同一の基準で評価すること、市町村が評価した後、都道府県間及び各都道府県内の市町村間の均衡を図るため、それぞれ所要の調整を行うこと等から、一連の評価事務には相当の期間を要するものである。このため、これらの手続を経て、二月末日までに価格を決定しなければならない等の物理的制約を考慮すると、基準年度の賦課期日から評価事務に要する期間をさかのぼった時点の時価を基準として(評価替えに係る価格調査基準日は、従来から基準年度の前々年度の七月一日としている。)賦課期日における価格を評価することは、技術的にやむを得ない措置というべきである。

なお、仮に平成六年一月一日における地価公示価格が固定資産税評価額を下回った場合についても、それは価格調査後の地価変動の結果に過ぎず(その時点までに地価が上昇することも下降することも当然予想されるところである)、著しく合理性を欠くような特段の事情がない限り、これによって既に決定された価格の適法性に影響を与えるものではないと解されているところ、本件においても著しく合理性を欠く結果となっていないことは前述のとおりである。

したがって、本件評価決定が本件固定資産評価基準に反し無効であるとの原告の主張は、採用することができない。

六  本件評価決定における評価の違法性について

1  本件土地の標準宅地の選択に関する判断の誤りの主張について

証拠(乙二七)によれば、標準宅地の選定は次のように行われることが認められる。

宅地の利用状況を基準とし、市町村の宅地を商業地区、住宅地区、工業地区、観光地区(温泉街地区、門前仲見世地区、名勝地区等)に区分する。この場合において、必要に応じ、商業地区にあっては繁華街、高度商業地区、普通商業地区等に、住宅地区にあつては高級住宅地区、普通住宅地区、併用住宅地区等に、工業地区にあっては大工場地区、中小工場地区、家内工業地区等に、それぞれ区分するものとする。そして右区分した各地区を、街路の状況、公共施設等の接近の状況、家屋の疎密度その他の宅地の利用上の便等からみて相当に相違する地域ごとに区分し、当該地域の主要な街路に沿接する宅地のうち、奥行、間口、形状等の状況が当該地域において標準的なものと認められるものを選定する。

また、証拠(乙一三)によれば、本件土地の標準宅地の選択に関し、次の事実が認められる。

本件土地は、市立殖蓮中学校の北で、殖蓮公民館南のJR両毛線踏切南の県道香林・西国定・伊勢崎線交差点東南約九〇メートルに位置するところにあり、第一種住宅専用地域であり、北側に正面路線、東側に側方路線があり、住宅用地(一戸建て)として利用されている。

本件土地が所在する地区(都市計画法八条の用途地域は第一種住居専用地域)については、用途区域の区分について住宅区域(普通住宅地区)に区分した。状況類似地域内においてその主要な街路として本件土地の北を殖蓮小学校から主要地方道桐生・伊勢崎線に北西から南東に走る道路(市道二―二六七号線)を選定し、右道路に沿接するカネコ建築塗装付近の土地である上植木本町二二一七番地三を標準宅地(固定資産評価額六万六二〇〇円/平方メートル)として選定した。

以上の事実からすると、本件土地の標準宅地の選択に不合理な点はなかったものというべきである。

なお、原告は、あさかハイツ付近の土地(固定資産評価額五万六〇〇〇円/平方メートル)が適切であると主張するが、右土地は本件土地の前記主要街路を挟んで北側(都市計画法八条の用途地域は住居地域)にあり、かつ右主要街路に沿接する土地ではないから、本件土地の標準宅地としては適切とはいえないというべきである。

2  本件土地の側道加算における側道認定の誤りの主張について

証拠(乙二ないし七)によれば、本件土地の東側に存在する私有地は、主要街路から審査申出地の東側を南に走り、用水のところで右折(西方)し、さらに二画地を経て、再び右折(北方)し、審査申出地の西方で同主要街路に至るコの字型の土地であり、建築基準法四二条一項四号の私道の位置指定を受けた道路(昭和三八年一一月四日第六八号指定)であって地目も公衆用道路となっていることが認められるから、評価庁の側道認定を相当とした審査庁の判断は誤っていないというべきである。

七  本件評価決定における手続違反(実地調査の欠陥)の主張について

法四〇八条は「市町村長は、固定資産評価員又は固定資産評価補助員に当該市町村所在の固定資産の状況を毎年少なくとも一回実地に調査させなければならない。」と規定しているが、この規定を単なる訓示規定と解するのは相当ではないから、市町村長は、年一回の実地調査をさせなければならないものというべきである。

しかしながら、法四〇八条は、年一回の実地調査を要求しているものの、それを固定資産の価格が決定されるまでに実施することまでは要求しておらず、また、そもそも右規定の趣旨は、固定資産の実情を的確に把握して適正な価格の評価を可能にするための一つの手段として規定されたものであって、右調査は、結局適正な評価に寄与することを目的として規定されているものであり、それ自体が目的ではないから、右規定の趣旨にかなう程度の調査が行われていれば足りるというべきであるところ、証拠(乙八、弁論の全趣旨)によれば、被告は、本件審査中の平成六年五月二三日、職権により審査申出地の実地調査を実施しており、また、伊勢崎市は、土地家屋現況図を図化し、公平、適正な課税を確保するため本件土地を含む上植木本町地区の土地及び家屋の全筆、全棟の調査を平成四年九月に終了し、さらに、原告が平成五年九月一九日に本件土地上に新築した家屋の調査を同年一一月二四日に終了していることが認められるから、前記規定の趣旨にかなう程度の調査は行われているというべきであり、本件評価自体が違法として取り消されるべき事由に当たるということはできない。

なお、法四〇三条二項は「固定資産の評価に関する事務に従事する市町村の職員は、……納税者とともにする実地調査、納税者に対する質問……等のあらゆる方法によって、公正な評価をするように努めなければならない。」と規定しているが、法四〇八条の調査に際しては、必ずしも法四〇三条二項の各手続をとることが要求されていないから、法四〇八条の調査に際して、法四〇三条二項の各手続がとられなかったからといって、法四〇八条の実地調査がなかったということはできない。

八  審査手続の違法性の主張について

1  審査手続(口頭審査)における説明不十分の主張について

法四三三条が定める口頭審理制度は、固定資産評価額の適否につき審査申出人に主張、立証の機会を与え、判断の基礎及び手続の客観性と公正を図ろうとするものであるから、口頭審理の方法、内容は、固定資産の評価についての不服事由を特定して明らかにし、これに関して主張、立証する機会が審査申出人に与えられ、右不服事由に即した実質的な審査を可能にするようなものでなければならないところ、固定資産の評価に関する情報、資料等は市町村が独占しており、審査申出人において、通常これを知る方法はないのであるから、委員会は、まず、自ら又は市町村長を通じて、審査申出人が不服事由を特定して主張するために必要と認められる合理的な範囲で当該土地の評価根拠等を知らせる措置を講ずべきである。

これを本件についてみるに、証拠(乙一五、一六)によれば、平成六年五月二三日及び同月二六日に開かれた原告に対する口頭審理において、伊勢崎市財政部長は、答弁書に基づき、口頭で、評価の根拠、本件土地の概要、本件土地の評価の手順、評価額の算定、評価庁の見解等を説明した。被告は、固定資産評価基準に即して本件審査申出地の評価を手順の概要、その評価方法を説明し、さらに、審査申出人の評価宅地の選定等に関する質問に対して答弁していることが認められる。

そうすると、被告は、原告が不服事由を特定して主張するために必要と認められる合理的範囲の事実を明らかにしているというべきである。

なお、原告は、標準宅地の所在を「カネコ建築塗装付近の土地」とするのみで具体的に「上植木本町二千二百十七番三の土地」としなかったことをもって、被告がこれを特定しなかったと主張するが、証拠(乙二三)によれば、自治省税務局資産評価室長により、「公開地点については、その所在ができるだけ明らかになるよう表示を工夫すること。ただし、個人のプライバシーの保護の観点から、当該地点の具体的な地番の表示は避けること。」という指導がされていることが認められ、右指導は国民の人格権保護の見地から合理性が認められるから、特定の方法は前記の程度をもって足り、標準宅地の所在の説明が不十分であったということはできない。

2  審査決定の理由不備、遺脱の主張について

固定資産の評価に関する審査決定の理由附記について、法四三三条七項は、特に行政不服審査法四一条一項の規定の準用を明記していないけれども、審査請求の性質等からみて、相当の理由を附することを要するものと解するのが相当である。

しかしながら、固定資産評価審査委員会は審査申出を受けた日から三〇日以内に審査の決定をしなければならないこと(地方税法四三三条一項)、固定資産評価審査委員会の構成員につき、特に固定資産税に関する専門的知識を有する者に限定していないこと(同法四二三条三項、四二六条)などを考慮すると、右相当の理由とは、一般的には審査申出人が決定の結論に至る概略が分かれば足りるものであり、詳細な理由までは不要であると解するのが相当である。

これを本件についてみると、前記本件審査決定書(甲一)によれば、評価方法、評価額の算定の計算式等に対する判断が示されていることが認められ、本件土地の固定資産評価額の算定に至る概略を具体的に知りうる程度の数値及び根拠が記載されているものであるから、本件審査決定には、理由不備の違法はないというべきである。

また、本件審査決定書に側道認定の具体的根拠が示されていないことは原告主張のとおりであるが、側方路線加算の数式は記載されているのであるから、理由遺脱には当たらないというべきである。

第四  結論

以上の次第であって、原告の本訴請求は理由がないからこれを棄却することとし、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官山口忍 裁判官高田健一 裁判官藤原俊二)

別紙〈省略〉

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